乙文殊宮 6

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別府からの帰り道はさんざんだった。天気さえも行きとはうって変わって、どんよりと今にも泣き出しそうな重い雲。自分の愚かさにため息を吐きながら、「ひなちゃん、ごめんね。もう無理みたい」何回も溜息がこぼれ落ちる。それでも、わずかな力を振り縛って、

”いや、あれはあれだ一経験として学びにすればいいんだ。そうだ。過去のことだ。頑張って、頑張って!”

そんな風に気持ちを切り替えようとやってみても、風に吹かれる雲のように、すぐに想いは吹き消される。もう頭がまわらない。

”なんで私がやんなきゃイケないの!?お願いもっと世間的に力のある人に頼んで。お願い。”

しまいにはやけくそで泣きながら神様に文句をつけた。

”私、大分まで行ったのよ。いろいろやったじゃない。それなのになんでこんなことになったの!”

自分の愚かさが招いた結果だと、自分の責任だとわかっていながらも、叫ばずにいられなかった。

「そうだねえ」神様が答えた。
「最初の頃は、『どこどこのお寺の方は「落書き」というのはおかしいとおっしゃいました』という意見を集めるためだったみたいだけど。おまえは何のために大分まで行ったんだろうねえ。」
「それは、あの住職は私の活動を肯定するどころか、佐賀まで来てくれるって言うから、私だって期待するわよ。ねえ神様、住職のブログ読んだ?感動ものよ。あれで地区の人達に話してもらったら一発でOKじゃん。」
「住職にこの仕事をバトンタッチしたかったんだね。」
「だって、彼だったら間違いなくひなちゃんを救えるわよ」
「だから昨夜の食事の時、おまえの口からあんな台詞がでできたんだよ。」
「はあ?何言ってんの。自分の思いと全く真逆のこと言ったから、こんなに落ち込んでるんじゃない。もしかして私に勝手に言わせたの?邪魔するために。」
「わっはっはっはっ。おまえが私に操作されたことがあるかね。一度でも。おまえが勝手に望んで、自分自身のためにやったことだよ。私はただ見ていただけだ。」
「私のため?まさか。私そんなにばかじゃないわよ。自分のためだったら、もっと上手に話してたわよ。」

「いいかい、今回の仕事にしたって、実はおまえの魂が望んで選んだんだよ。おまえがやりたくてやってるんだよ。おまえが自分でやらなくては意味がないんだ。なのにおまえは住職の背中におぶさろうとした。でもね、最終的にこの問題をクリアーしても、人の背中に乗ったままで、自分の足で歩かないことには経験したことにはならないんじゃないかな。」「でも、神様はいつも楽しみなさい、感動しなさいって言ってるじゃない。自分が嫌なことや、苦しいことをわざわざ選ばなくてもいいよって言ってるじゃない」
「いいかい。だからといって、わしは怠け者になりなさいとは言わないよ。ただ毎日おいしい食事をして、やわらかいベッドで楽しい夢を見る。夢にリアリティがあれば、それを経験だと錯覚するかもしれない。でもそれは本当の「経験」じゃない。うすっぺらな脳の遊戯だ。せっかく肉体をもって生れて来たんだから、自分の足で歩いて、五感を全部使って、魂の感動を味わうべきじゃよ。」

なんかいつものように言いくるめられて、それでも現実は変わんない。ごちゃごちゃ理屈はいらない。

よーーーーしっ!また最初からスタートしよっ!!

落ち込んでなんかいられない、家に帰るといつものように現実の仕事が待っている。帰りのながい道のりを、ひたすら自分に言い聞かせながら、アクセルを踏んだ。

つづく

 


編集者注釈

私の個人的な見解で申し訳ないのですが、このページの内容が今回の一番重要な内容だと思っています。それでいて、このページが今回の全ての意味を補完するものでしょう。

最終更新 ( 2010年 9月 07日(火曜日) 00:01 )